お楽しみはパジャマパーティーで

読書の備忘、アニメの感想などを書いています

2014-01-01から1年間の記事一覧

カタルシスが足りない! ―アニメ雑感

前々回の記事で『結城友奈は勇者である』について書きましたが、最新話はセカイ系みたいになってました。汗 演出にしろ、脚本にしろ既視感のある本作ですが、まあ既視感自体は、オマージュとかパロディという言葉があるように、必ずしもマイナス要素にはなり…

「ロマンス」の条件 ―『ホールデンの肖像』から

以前の記事で、何気なく「ロマンス」という言葉を用いましたが、尾崎俊介『ホールデンの肖像 ペーパーバックからみるアメリカの読書文化』という、アメリカ文化についてのエッセイ集を読んでいたら、文学ジャンルとしての「ロマンス」に明確な定義を下してい…

さあ、等価交換しましょ ―『結城友奈は勇者である』から考える

今期の『結城友奈は勇者である』についてテーマ的に語ってみたいと思います。 まあ、このアニメそれほど面白いというわけではないのですが、話の展開を「どのように持っていくのだろう」という極めて外野的な興味です。 実は韻を踏んだ駄洒落っぽい題名から…

さやわか『一〇年代文化論』 (星海社新書)

一〇年代文化論 (星海社新書) 作者: さやわか 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/04/25 メディア: 新書 この商品を含むブログ (12件) を見る ●キーワードは残念 題名の通り2010年代の文化論について、「残念」というキーワードがネガティブからポジティ…

MOOCで『マンガ・アニメ・ゲーム論』が受講可能

オンラインで有名大学等の講義が無料受講できるサービスであるムーク(MOOC:Massive Open Online Course)で、『マンガ・アニメ・ゲーム論』の受講者を募集しているようです。(開講は来年1月) リンク:https://lms.gacco.org/courses/gacco/ga021/2015_0…

『SHIROBAKO』 ―地方のアニメ制作会社のブランディングについて

アニメファンの一つの楽しみ方として、制作会社単位で批評するということがあると思います。以前「アニメにおけるデジタル化と地方分権について」というエントリを書きましたが、近年地方に興ったアニメーション制作会社が京都アニメーションに続くのかとい…

萌えアニメにインディーズ映画のような演技を持ちこむ声優

―狭義のアニメ(主にオタク市場の深夜アニメ)の女性声優さんについては、求められる声質が定式化されていて、視聴者としてはそれぞれの声優さんのタイプについてマッピングをしやすいのですが、男性声優さんとなると個性的な声質の中堅・ベテラン声優さんは…

『実験でわかるインターネット』 ―さすがのジュニア新書

実験でわかるインターネット (岩波ジュニア新書) 作者: 岡嶋裕史 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2010/03/20 メディア: 新書 クリック: 13回 この商品を含むブログ (5件) を見る 前エントリにつづき、ネットワーク関連の平易な入門書。 ユニークなのは、…

『アカマイ―知られざるインターネットの巨人 』 ―ネットワークのお勉強の本でした

アカマイ―知られざるインターネットの巨人 (角川EPUB選書) 作者: 小川晃通 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2014/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る アカマイとは 著者がおおまかに言うところアカマイとは「顧客のデータをインターネット上…

「デジタル・イメージの諸次元」―3DCG批判の思想的論拠とは

アニメは越境する (日本映画は生きている 第6巻) 作者: 黒沢清,吉見俊哉,四方田犬彦,李鳳宇 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2010/07/30 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 82回 この商品を含むブログ (7件) を見る 岩波の映画叢書<日本映画は生きて…

『アニメ学』(2)―アニメにおけるデジタル化と地方分権化について

アニメ学 作者: 高橋光輝/津堅信之 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2011/04/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回 この商品を含むブログ (4件) を見る アニメ学の概説書で、多くのトピックを扱っていますが、「アニメの制作手法…

『iPhoneで誰でも映画ができる本』

iPhoneで誰でも映画ができる本 作者: 樫原辰郎,角田亮 出版社/メーカー: キネマ旬報社 発売日: 2011/09/30 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 5人 クリック: 287回 この商品を含むブログを見る こちらのブログ記事(インパクトのある映像制作入門書ベ…

『日本のアニメは何がすごいのか――世界が惹かれた理由』

日本のアニメは何がすごいのか 世界が惹かれた理由(祥伝社新書) 作者: 津堅信之 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2014/03/03 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る ●日本のアニメは「すごく」売れてはいない 題名だけ見ると、日本産アニメ礼賛…

『Free!』第11話―クロースアップとアニメのテクスチャーについて―

以前の記事でかなり適当なことを書き散らしてしまいましたが、デジタルによるシームレスなボケがアニメに独特なテクスチャーを与えているというのが要旨でした。しかし、おかげで割と気を留めて見るところが増えてしまい、『Free!』の最新話を見ていたら、ク…

『「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画』

「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画 作者: 秋田孝宏 出版社/メーカー: NTT出版 発売日: 2005/07/25 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 21回 この商品を含むブログ (29件) を見る 著者の早稲田大学大学院修士論文をもとにしたものということ…

『ディジタル作法』

ディジタル作法 −カーニハン先生の「情報」教室− 作者: Brian W. Kernighan,久野靖 出版社/メーカー: オーム社 発売日: 2013/02/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 1人 クリック: 21回 この商品を含むブログ (10件) を見る コンピュータ関連の知識…

「ですます調」雑感

近頃は熱心にアニメを見ます。もともとは実写映画の方は割と見る方だったのですが、押井守監督の言説に啓発されて、実写映画とアニメを往復するのが楽しくなりました。ただし今は、実写の方は理論や批評などのお勉強が多く、アニメの方は作品を見ることが多…

エンタメで描かれる天才像について

世評の高いSF作家、テッド・チャンの「理解」という短編を読んで、娯楽作品に描かれる「天才」について少し考えました。 あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF) 作者: テッド・チャン,浅倉久志・他 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2003/09/30 メディア:…

『グラスリップ』の「なにをやりたいのか分からない」感について

今のところ『グラスリップ』は「なにが起こっているか」は分かるのだけど「なにをやりたいのか」が分からない、という奇特なアニメです。捉えどころのないアニメというのではなく、半分以上を見て私が捉えたところの感想がこれなのです。 ●P.A.WORKS作品とい…

『アニメ学』

アニメ学 作者: 高橋光輝/津堅信之 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2011/04/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回 この商品を含むブログ (4件) を見る 先日『アニメ研究入門』という本を紹介しましたが、いま『アニメ学』という…

『イメージの帝国/映画の終り 』

イメージの帝国/映画の終り 作者: 吉本光宏 出版社/メーカー: 以文社 発売日: 2007/11/15 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (7件) を見る 少し前の本でありますが、先日の『入門・ハリウッド映画講義』の参考文献に上がっていたので、興…

『クール・ジャパンはなぜ嫌われるのか』

クール・ジャパンはなぜ嫌われるのか - 「熱狂」と「冷笑」を超えて (中公新書ラクレ) 作者: 三原龍太郎 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2014/04/09 メディア: 新書 この商品を含むブログ (6件) を見る ●そもそも書名の問題意識について 書名のキャ…

そのアニメ、「シュール」という前に――真夏の昼の超現実

●超日常としての夏休み 夏真っ盛りです。 夏休みというと、学校は長期休暇になりますから、学生の方は『耳をすませば』の雫のように、なにか非日常の始まりを期待してしまうかもしれません。たとえば、これは学生に限らず、田舎への帰省はまさにその典型で、…

『入門・現代ハリウッド映画講義』 で少し映画史の勉強――実写とアニメーションのアルケオロジー

入門・現代ハリウッド映画講義 作者: 藤井仁子 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2008/03 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 113回 この商品を含むブログ (18件) を見る 以前読んだことがあったのですが、面白かった記憶があって、思うところがあり再…

何が私を悲しくさせたのか―『凪のあすから』と『ゴールデンタイム』に弄ばれたジャンル的純情

毎週アニメを見ていますが、リアルタイム批評は難しいですね。 ツイッターくらいの短文の感想なら出てくるのですが、やはり全話視聴後の全体的な作品イメージから帰納しないと、コンセプチュアルな発想は出てきません。かといって短文や怪しい仮説だけで文章…

『なんでコンテンツにカネを払うのさ?』

なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門 作者: 岡田斗司夫,福井健策 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ 発売日: 2011/12/01 メディア: 単行本 購入: 7人 クリック: 132回 この商品を含むブログ (32件) を見る アニメ…

『ニートの歩き方』

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法 作者: pha 出版社/メーカー: 技術評論社 発売日: 2012/08/03 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 16人 クリック: 1,642回 この商品を含むブログ (88件) を見る 石岡良治さんの…

『アニメ研究入門』

アニメ研究入門―アニメを究める9つのツボ 作者: 小山昌宏,須川亜紀子 出版社/メーカー: 現代書館 発売日: 2013/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る クリティックな興味から手に取ってみましたが、「研究」とあるようにアカデミックを志…

アニメとデジタル一眼レフとカメラ女子について語りたかった

ちょっと思いつきになります。 以下の考察について実証性は低いのでご容赦ください。笑 ●アニメのボケ表現について ときどきアニメの「ボケ bokeh」表現で、違和感を感じることがあります。一般的にボケはレンズの被写界深度との関係で生まれるものですが、…

『魔法科高校の劣等生』の歓迎すべき凡庸さは作品論だけでは評価できない

●作品単位ではなく、クール単位でアニメを経験するということ 周知の通り、深夜アニメは、3ヶ月を1クールとし、毎週1話ずつ放映されるという商業形態をとっています。一方で録画やストリーミングなど、見る側の方法も多様化しております。石岡さんの『「超…