『ニートの歩き方』
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
- 作者: pha
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/08/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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石岡良治さんの『視覚文化「超」講義』で、教養主義の系譜の中のバンカラとして、『さよなら絶望先生』や京大吉田寮の『四畳半神話大系』をあげつつ、本書のphaさんもその系譜かもしれない、なんて書いてあって興味を持って手に取りました。
現代文化論としていろいろと毀誉褒貶はありそうですが、技術評論社というところから出版されれているように、ハウツー本としての役割は果たしているので、「働かないことが最高の贅沢」という人が読むとよいと思います。
phaさんのヒストリーで面白いのは、やはり28才でツイッターとプログラミングに出会ってライフスタイルを変えることが出来たというところでしょう。一応ネットで生計を立てている方ですが、「もともと小説ばかり読んでいる文系の人間で、コンピューターは苦手だと思っていたのでインターネットに興味を持つようになったのは結構遅くて、年齢でいうと21歳くらい」だそうです。
そういった理由でプログラミングにも興味はあったそうですが、「独学で勉強を始めてはうまくいかなくて、挫折するというのを何度か繰り返していた。その何度目かのプログラミングへの挑戦を2007年にしてみたら、そのときにたまたま何かの歯車がうまく合って…」と述懐しており、予想していたギークっぽさがなく、何かリアリティがあります。
「そのときにうまくいった理由は、『こういうウェブサービスを作ってみたい」という、作るものがはっきりしていたのがよかったのだと思う。特に目標もなく、『なんとなく技術を身につけたい』だけだと挫折してしまうことが多い。」一種のビルドゥングスがあります。
個人的に面白かったのは保坂和志さんの「無職というわけでもないけど時間に余裕のある若者たちが集ま」る『プレーンソング』という小説が好きだというところ。昔私の友人が、「『プレーンソング』を読んで緩い共同生活に憧れをもった」というのを聞いて、『プレーンソング』に描かれるような非経済的なライフスタイルに憧れるというのは危うさもあるな、とか考えてしまったことを思い出したのです。
非経済的と書いたのは、『プレーンソング』という小説には固有のリアリティがあるだけで、現実としてはお金の問題があるからです。ただし反経済というやり方ならある、というのは本書で示されていると思いました。ちなみに当該の友人は本書でも言及されている坂口恭平さんのことも好きだったので、やはり似た思想圏にあったのかもしれません。
あと『プレーンソング』から、日常つながりで『よつばと』が紹介されています。