『マンガ・アニメ・ゲーム論』受講してみました
以前の記事でも紹介しましたが、MOOCの『マンガ・アニメ・ゲーム論』を受講してみました。
全部で4週に分かれており、第1週目は森川 嘉一郎氏の『マンガ・アニメ・ゲーム論序説』です。
登録はメアドとニックネームと修了証用の氏名(非公開)を登録するだけの簡略なものです。受講形式はyoutubeのプレイヤーで15分程度の単元に分割された6本の講義映像を見るというものです。映像は0.25~2.0のスピードで速度調節が可能です(大事)。
明治大学「マンガ・アニメ・ゲーム論」講座PV ~ gacco:無料で学べる大学講座 ...
・個人コレクションではなくミュージアム
内容はまず米沢嘉博記念図書館や、マンガ・アニメ・ゲームの複合アーカイブ施設として建設予定の「東京国際マンガミュージアム」(仮称)の必要性から入ります。
それから、そこでアーカイブされる雑誌資料から、マンガ、アニメ、ゲームのブームの流れを簡単にたどります。作品分析だけでは見えてこない、文化や風俗の側面を研究するために、ミュージアムが必要であるということです。
・商品(おもちゃ)から見たアニメの歴史
次に、そのような学究的なアプローチの具体例として、アニメとおもちゃの関係性について詳しく分析します。スポンサーとなるおもちゃメーカーのマーチャンダイズと作品の内容が密接に関わっている、という指摘です。
たとえば、『マジンガーZ』の超合金のヒットが、巨大ロボットアニメという日本に特異なジャンルを再生産する流れを決定づけた、とかおもちゃのプレイバリューを高めるための変形や合体が作品に取り入れられるようになった、という話です。あるいは、『ひみつのアッコちゃん』の原作では卓上であった鏡を、アニメ化ではコンパクト型にしておもちゃ化し売り出したことが、女の子の魔法少女アニメというジャンルを生み出した、という話など。子供たちの変身願望充足。
また、ガンプラがミリタリー雑誌に掲載され細緻な模型製作への憧れをかきたてることで、作品の背伸びした作風とシンクロした相乗効果があったなどの指摘なるほどなと思いました。
さらに、上記のようなおもちゃメーカーとの一体化したビジネスモデルとは別のモデルの登場として『新世紀エヴァンゲリオン』を挙げています。ロボアニメでありつつも、レコード会社がスポンサーとなり製作委員会方式で制作された本作を嚆矢として、映像というソフトそれ自が商品としてコア層に訴求するようになり、後の深夜アニメへとつながったという文脈まで解説しています。
・メインストリームへ流れ出す同人誌作家たち
最後に「おたく」という言葉の起源と表象から、関連してコミケに代表される同人誌の文化に言及しています。
あずまきよひこ氏が同人誌からスタートし、商業商品のおまけ4コマの仕事等を経て、『あずまんが大王』のヒットで「萌え四コマ」というジャンルを切り開いたという流れから、昨今の「けいおん」や「日常系」の広汎なヒットまでを概説。
同人誌からデビューした作家が一般誌で活躍するのも当たり前となった今日、上記のような文化現象を研究する資料として同人誌*1の閲覧の必要性もあるといいます。つまり、ここでも冒頭のミュージアムの必要性というテーマが通底しているわけですが、まあそこは御愛嬌ということで。
ということで『序説』の内容はざっと以上のような感じです。あと、「クールジャパン」の話など。
簡易な登録ですぐ受講できるので興味があればどうぞ。
今後マンガ、アニメ、ゲームの各論が配信されるので、機会があれば紹介します。
*1:余談ですが以前『電子立国は、なぜ凋落したのか』という本で、「凋落」の原因の1つとして日本の半導体メーカーは設計に特化するファブレス(たとえばiPhoneにおけるApple)と生産に特化するファウンドリ(たとえば現在のシャープの液晶パネルの生産工場がこのモデル)に分業しそこねたという指摘があって、逆に古くからファブレスとファウンドリの棲み分けができている文化に出版社と印刷会社を挙げていました。まさに同人誌の出版は印刷会社が商業出版社と分離しているからできたことで、ちなみにこれはお正月特番の『新春TV放談2015』の「ネットvsテレビ」の議論の文脈で岡田斗司夫が言っていたことですが、最初は同人誌文化に敵対していた出版社も戦略を変え同人作家をフックアップするようにしたことで、たくさんの作品が生まれるようになったということです。