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お楽しみはパジャマパーティーで

読書の備忘、アニメの感想などを書いています

『SHIROBAKO』 ―地方のアニメ制作会社のブランディングについて

 

アニメファンの一つの楽しみ方として、制作会社単位で批評するということがあると思います。以前「アニメにおけるデジタル化と地方分権について」というエントリを書きましたが、近年地方に興ったアニメーション制作会社が京都アニメーションに続くのかという問題は、アニメーション産業の構造改革にもつながる可能性がある興味深い動向であります。

 

P.A.WORKSのカウンター

その意味で、今まで富山県、石川県、福井県など地方を舞台とした青春ドラマを描いてきたP.A.WORKSが、あえてアニメ産業の集積地である東京の西*1を舞台とした、アニメ制作を題材とした『SHIROBAKO』を制作しているというのはなかなかエスプリが効いたカウンターだと思います。*2

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前作の文芸趣味溢れる怪作『グラスリップ』*3とは打って変わって、ストレートなドラマになりそうです。しかも地方の自然や景観描写という強力な武器がない分、表現方法も異なってきます。たとえば『グラスリップ』はしばしば電車が登場しましたが、『SHIROBAKO』では冒頭から軽自動車のカーチェイスです。今後も軽自動車の活躍は間違いないでしょう。

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『グラスリップ』第一話冒頭部

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『SHIROBAKO』第一話冒頭部

 

●だから「地方のアニメ制作会社のブランディング」ってなんなのさ

とはいえ共通項もあって、それが本題の「地方のアニメ制作会社のブランディング」に通じています。それは制作会社レベルで一貫性のあるキャラデザインです。たとえばキャラクター原案やキャラクターデザインに就く人はそれぞれのアニメで異なっているので偏差はあっても、P.A.WORKSという制作会社単位で一貫したキャラクターデザインのポリシーがあるように感じます。『花咲くいろは』や『Another』くらいからだと思いますが、大きな瞳と、かなり尖った顎先、傾きの大きい極小のおちょぼ口、異様に華奢な身体、などといったP.A.WORKSが存在していると感じます。なにか求められているドラマの内容から、キャラクターはある程度の身体性と精神年齢を持ち合わせているのですが、同時にアニメ特有の経済的なデフォルメが加わっているために、幼形成熟ネオテニー)の度合いが強いとでもいいましょうか。あと中年、老年のヴァリエーションが多いのも特徴的です。『SHIROBAKO』も登場人物は学生でなく成人ばかりですが、違和感ありません。

 

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花咲くいろは

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『Another』

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凪のあすから

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『グラスリップ』

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『SHIROBAKO』

 

で、こういったキャラデザインの一貫性が、制作会社をブランディングするのに一躍買うのではないかと考えた次第です。この方法が視聴者に制作会社を意識させるのに一番手っ取り早いからです。成功者である京都アニメーション氷菓くらいからでしょうか*4、他の萌えアニメをあざ笑うかのような、節度のあるバランスを持ったキャラクターが作品を超えて一貫するようになり、作品ごとにマイナーチェンジがあっても京都アニメーション・ブランドだなあと感じます。

 

あと気になるのはユーフォーテーブル。今のところ武内崇キャラ原案の作品が連続しているので何とも言えませんが、デジタル志向の画づくりには一貫した個性がありますので、今後制作会社としてのブランディングをしていく上で、キャラデザインのレベルでも一見して分かるようなユーフォーテーブルっぽさが出てくると面白いかと。

 

もちろん私たちの周囲の商品を見回してみれば、ブランド化が一概に消費者にとって良いことだとは言えないのですが…

 

 

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*1:つまり見方によっては病巣ということです。

*2:ここで論じているのはあくまで地方と都心の問題であるので、「自らが属する産業のブラックな実態を自己言及的に描く作品」というような論点ではありません。その意味では、主人公の好物であるドーナツや、劇中のアニメ『エクソダス』(=exodus; 外出、出国。出エジプトの意もあるらしい)など、なんか深読みできそうなガジェットも…

*3:あえて「文学」ではなく「文芸」と書くのは、そういった趣向が文庫本などのガジェットを使った一種の意匠やモードのレベルで『グラスリップ』に採用されているだけだと感じたためで、限定的な意味の強い「文芸」という言葉を使いました。私にはあの作品を解題することはできませんでしたが、なんとなく学校教育の国語や現代文のような、「このとき○○はなんと思ったでしょう」を問われているような気分になりました。ただし、アンビエントな日常系としてはアリだと思いました。

*4:とはいえ原型は『クラナド』のような気がします。