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書店で見かけて気になっていたのだが、アマゾンの評価がヒドくてまた気になっていた。
30分くらいで読んじまったぜ。星海社新書だから許されるこのドライヴ感。
白眉なのがタイトルで、「戦略的上京」と言うと、住居を定めるときのhow to本のような想像をさせる。
実際に内容も、上京する時にどのように住居をきめるかという導入から始まって期待させる。ただその内容が、やりたいことを決める→住む場所(聖地)が決まる→そこの一駅隣をねらえ!というレベルで、「論」とか言えたもんじゃない。
やりたいことと、住むべき場所をリンクさせられないのが「戦略」を欲する人の心情ではないか。
ところが、
・芸能人になりたい→港区
・穴場→谷根千
・そういう趣味がある→秋葉原
・本が好き→神保町
・若い友人を作りたい(地方出身者が多いから)→高円寺
など、まとまりのない街の特徴例にとどまっている。そして、上記の駅から「一駅ずらす」というわけだ。
具体的に「東京性」がある記述はこの第2章までで、以降は投資家、事業家である著者の、投資用語をちりばめた処世術、自己啓発が終章である第5章まで続く。
なぜこれが東京に結びつくかというと、東京=資本主義の中心。だから「東京をサヴァイブ」する=投資家思考の処世術が「東京論」と言い得る、ということなのだろう。
しかし、である。
私自身が地方出身者であったということもあり、当時の自分のような人間が読者層だとするなら、上京から入学or就職、そしてその後に送るであろう生活を具体的に想像させるように書かれており、よい情報を得られる本になると思った。
なにより、具体例ばかりで、異様にリーダブルなので、田舎高校生にはうってつけではなかろうか。(とりあえず読みやすさに関しては、徹底していて感心する。)
ただし、これも地方出身者として言わせてもらえば、「星海社新書」など近所の本屋にはなかなか置いてあるものではないだろう。(「東京の田舎」出身だという著者のマージナル性が、悪く出てしまっていると思う。)
一言で感想を言えば「具体例ばかりで読みやすい投資家の教える処世術」。